埼玉県立自然の博物館(旧・自然史博物館)は、埼玉県秩父郡長瀞町長瀞にあります。
秩父線の上長瀞駅から約400m徒歩5分ほどのところの荒川沿いにあり、すぐ前が上長瀞河原になっています。「岩畳」からは少し上流に行ったところにあたります(国の名勝・天然記念物に指定された区域なので、岩石や植物の採取などは規制されています)。
館内に入るとオリエンテーションホールの天井には、カルカロドン・メガロドン(カルカロクレス・メガロドン)の巨大な復元模型、正面には高さが約2メートルほどの顎の復元模型などが展示されています。
メガロドンは400万年くらい前に絶滅したと考えられているサメの仲間です。1986年(昭和61年)に大里郡川本町(現・深谷市)の荒川の約1000万年前の地層から、1個体のうちの合計73本の歯のセットが発見されました。これは歯の並び方が復元可能である世界的に貴重な化石です。
また、右奥の中央は海獣パレオパラドキシアの展示があります。発掘された骨による実物復元や、全身の骨格復元模型などが並んでいます。
パレオパラドキシアは日本や北アメリカ西海岸など太平洋沿岸で、1500万年ほど前に生息していたカバに似た体型の海辺の哺乳類です。
パレオパラドキシアの化石は世界的に少ないですが、秩父地方ではいくつもの出土例が見られます。このうち代表的なものが、1975年(昭和50年)に秩父市大野原で荒川の崖から発見されたものと、1981年(昭和56年)に秩父郡小鹿野町般若(はんにゃ)で旧・秩父セメントの粘土採石場から発見されたものです(現在は「般若の丘公園」。ここでは1983年に大型魚類チチブサワラの化石も発見されました)。
1988年(昭和63年)から運行が始まった秩父線のSLは、パレオパラドキシアにちなんで「パレオエクスプレス」と名づけられています。
地学展示ホールでは、岩石・鉱物が展示され、地質・地層なども解説されています。生物展示ホールでは、県内の4種類の森とそこに暮らす動物の様子のジオラマ展示などがあります。
博物館前には「日本地質学発祥の地」の碑があります。長瀞をはじめとした秩父地方は、明治のはじめから地質学者が訪れ、盛んに研究されてきたことから「日本地質学発祥の地」と呼ばれています。1993年(平成5年)、赤鉄石英片岩を使って碑が建てられました。
この博物館の歴史は長く、秩父鉄道により1921年(大正12年)から開設された秩父鉱物植物標本陳列所(秩父鉱石標本陳列所)などが起源となっています。その後、秩父自然科学博物館(秩父鉄道開設)、埼玉県立自然史博物館を経て、現在の埼玉県立自然の博物館になっています。
また近くの宝登山に登ると、秩父地方の広い範囲を一望することができます。
博物館正面
屋外にある褶曲の展示の一つ
「日本地質学発祥の地」の碑
秩父線の上長瀞駅から約400m徒歩5分ほど。
また長瀞駅からは、南桜通りを抜けて約1km徒歩15分弱です。長瀞駅下の「岩畳」から荒川沿いの遊歩道を歩くコースもあります。
埼玉県立自然の博物館
http://www.shizen.spec.ed.jp/
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